同族会社は税務調査において特別な注意を払われる企業形態です。役員と株主が同一または親族関係にある場合が多く、税務上の特例や制限が数多く適用されます。本記事では、同族会社特有の税務リスクと、調査に備えた事前対策について詳しくご説明いたします。
同族会社で最も注意すべきは役員給与の問題です。定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与のいずれかに該当しない場合は、損金算入が認められません。特に定期同額給与については、支給額や支給時期の変更に厳格な制限があります。役員給与の決定過程を議事録で明確にし、変更がある場合は正当な理由を文書化しておくことが重要です。
役員賞与の取扱いも複雑な論点です。事前確定届出給与として届出を行わない限り、役員に対する賞与は損金算入できません。決算賞与を支給する場合は、事前に税理士と相談して適切な手続きを確認します。また、現物給与や経済的利益の供与についても、適正な評価と課税処理が必要です。社宅の提供、車両の貸与、ゴルフ会員権の使用などは特に注意が必要です。
同族会社の行為計算否認規定への対応も重要です。税負担を不当に軽減する目的で行った行為や計算については、税務署長が否認することができます。特に親族間取引、関連会社間取引、組織再編などは詳細に検討され、経済的合理性や事業目的の存在が問われます。取引の経済的実質を重視し、適正な価格設定を行うことが重要です。
留保金課税の対象となる可能性も検討しておく必要があります。資本金または出資金が1億円以下の同族会社でも、特定の要件に該当すると留保金課税の対象となります。課税対象所得金額、留保控除額、課税留保金額の計算を正確に行い、必要に応じて配当政策の見直しも検討します。租税特別措置法の各種軽減措置の適用可能性も併せて検討します。
親族間取引の価格設定は特に慎重に行う必要があります。独立第三者間取引価格と比較して適正な価格設定を行い、その根拠を明確にしておきます。不動産の売買、賃貸借、業務委託、資金貸借など、様々な取引形態について適正価格を検証します。価格設定の根拠資料として、不動産鑑定書、市場価格調査資料、同業他社との比較資料などを準備します。
みなし役員の判定も重要な論点です。法人税法上の役員に該当しない者でも、実質的に経営に参画している場合はみなし役員として取り扱われ、役員給与の規制が適用されます。株主でない親族や、議決権を有しない株主なども、経営への関与の実態によってはみなし役員に該当する可能性があります。職務内容、権限、責任を明確にし、雇用契約書や職務分掌規程で明文化します。
組織再編税制の適用を受ける場合は、適格要件の充足を慎重に検証します。同族会社では支配関係や従業員引継ぎ要件などで問題となるケースが多く見られます。再編の事業目的、株主の継続性、事業の継続性などについて詳細な検討を行い、必要な証拠資料を準備します。また、再編後の事業運営についても、適格要件を継続的に満たすよう注意が必要です。
最後に、同族会社の内部統制整備について言及します。所有と経営が一体化している同族会社では、内部牽制機能が働きにくい傾向があります。意思決定過程の透明性確保、取引の客観性確保、利益相反取引の回避などについて、明確なルールを設定し、運用することが重要です。税理士や外部監査人の活用により、第三者の視点を取り入れることも効果的な対策となります。